Vol.66 2015 No.6


「色づく旅路」 わたらせ渓谷鐵道 沢入(群馬県みどり市)
秋の休日、山あいをゆくローカル線に揺られてみました。その最後尾の窓際に立つと、ひとつひとつの駅が去ってゆく様子がよく見えました。色づいた木々は午後の陽光に照らされ、信号機までも、紅葉にリンクするかのように、赤く点灯していました。旅の途中の素朴な駅構内は、紅葉の小さな名所でした。
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Vol.66 2015 No.5


「夕陽に染まる家路」 一畑電車北松江線 大寺(島根県出雲市)
刈り入れ前の金色の田んぼ。稲穂を梳く初秋の風。涼やかな音色に踏切警報機の音が重なると、小さな駅には、可愛らしい二両編成。窓明かりには家路へと向かう人影。夕陽色のセロファン越しの、鉄道と人とが織り成す、何気ない日々の営み。それは、何物にも代えがたい、ひとつの作品でした。
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Vol.66 2015 No.4


「潮風に寄り添って」 参宮線 池の浦シーサイド(三重県伊勢市)
列車の窓から海が見えだすと、目と心を奪われてしまうのは、私だけでしょうか。車窓に広がる海、潮風のプラットホーム、踏切の向こうの水平線、鉄道と海とが織り成す世界は、不思議な浪漫に満ちています。海沿いの線路を記憶の奥へとたどれば、初めて海を見た遠い夏の思い出が、甦ってきます。
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Vol.66 2015 No.3


「山並み遥か」 小海線 青沼-臼田(長野県佐久市)
高原の無人駅から伸びる、ひとすじの線路。その軌跡に迷いはなく、一直線に、遥かな青い山並みへと続いていました。水を張った田んぼには青空が映り、水面を撫でた一束の風は、私の頬にもそっと届く。何かが始まりそうな、どこまでも行けそうな、そんな季節が今年もやって来ます。
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Vol.66 2015 No.2


「春風は線路づたいに」 小湊鐡道 上総久保(千葉県市原市)
線路沿いに立つ桜の木は、まるで、あかりを灯したかのように、小さな片面ホームを照らしていました。やがて、鳥のさえずりに混じって、踏切警報機が鳴りだすと、ゆるやかにカーブした単線の線路の上を、気動車がゆっくりと近づいてきます。きっと、そよ吹く春風を動力にして。
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Vol.66 2015 No.1


「富士山が見える構内」 静岡鉄道静岡清水線 長沼(静岡県静岡市)
複雑な架線や鉄道設備が、澄んだ冬晴れの空をキャンバスにして、独特のアートを描き出します。静岡での仕事の折、せっかくだからと早起きをして列車に揺られ、ふと途中下車した時の情景です。工場らしき建屋と、幾本もの留置線が並ぶ駅構内を見守るように、朝陽を浴びた富士山が、神々しく聳え立っていました。
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